『世説新語』の版本について

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1書名について

 『世説新語』は「世説」「世説新書」「世説新語」の三種の呼称がある。
 「世説」という呼称について、梁の沈約撰の『宋書』の劉義慶の伝には記述がなく、 唐の魏徴等撰の『隋書』経籍志に「世説八巻宋臨川王劉義慶撰 世説十巻劉孝標注」とあり、 唐の李延寿撰の『南史』の劉義慶の伝には「所著世説十巻」とある。『旧唐書』経籍志には 「世説八巻劉義慶撰 続世説十巻劉孝標撰」とあり、『新唐書』芸文志には「劉義慶世説八巻 劉孝標続世説十巻」とある。
 「世説新書」という呼称は、唐の段成式の『酉陽雑俎』続四に「世説新書」とあり、 また日本に伝存した唐写本残巻の本文末に「世説新書巻第六」とある。
 また「世説新語」という呼称は、唐の劉知幾の『史通』巻十七に「宋臨川王義慶著世説新語」とある。
 これらから唐代には、「世説」「世説新書」「世説新語」という三種類の呼称が行われていたことがわかる。 また北宋の太平興国三年にまとめられた『太平広記』にも『世説』『世説新書』『世説新語』三種からの引用がある。 この後、「世説新語」に統一されていったようである。

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2巻数について
 南宋の汪藻の『世説叙録』によると、二巻本・三巻本・八巻本・十巻本・十一巻本があったようである。 『隋書』経籍志などをみるに、八巻本・十巻本が古い形のようであるが、現在伝わるものは多くが三巻本である。

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3版本について
 『世説新語』の版本については、八木沢元氏の『世説新語』(明徳出版社 昭和四十五年)の解説に詳しく述べられているので、それを参考にして主な版本について以下にまとめた。
○唐写本世説新書残巻
  京都に伝存していた残巻を羅振玉氏が影印したもの。
○南宋紹興八年刻本(佚)
  南宋の紹興八年にが家蔵の旧本と晏元献の手訂本を校訂したもの。
○前田家蔵宋刻本尊経閣本
  金沢文庫旧蔵のこの本は、現存する宋本として貴重なものである。 汪藻の『世説叙録』が付されている。現在見られる版本の中で最も優れたものであるとされる。 宮内庁書陵部にも同じ宋本が一本所蔵されているが、『世説叙録』を欠く。
○南宋淳煕十五年陸游重刻本(佚)
  刻本を重刊したもの。
○南宋劉辰翁批点本
  南宋の劉辰翁が劉孝標の注に自らの注を加えたもの。 八巻本と三巻本があり、 八巻本の元刊本が内閣文庫に所蔵されている。
○明嘉靖十四年嘉趣堂刻本
  明の嘉靖十四年にが南宋の陸游の重刻本をさらに重刻したもの。
○清王先謙思賢講舎本
  清の王先謙が嘉趣堂刻本を基に刊行したもの。最も流布した。
○四部叢刊本
  上海の涵芬楼蔵刻本を影印したもの。

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